Letter No.29 モテ期の到来
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| ぶぶと僕の手 嫌がる息子の手を押さえつけて 無理やりハート型をつくる |
「あら、可愛いわねぇ。今いくつ?」
外でぶぶをベビーカーに乗せて歩いていると、よく知らない女性に声をかけられる
年齢層で言うと大体50代から80代?くらいが多い
そのストライクゾーンにハマれば
仮に声をかけられなかったとしても
最低限「温もりスマイル」を頂戴することは
ほぼ確実である
なお「温もりスマイル」とは
一定の年齢を超えたおばさま達が持つ
顔を右斜め15度傾け
慈しみに満ちた表情で
薄目、口角上げ気味で微笑む
あの温もりに溢れた笑顔の技術のことをいう
私の母も、妻の母もこの技術を持っている
アラフォーに近づく姉も少しずつ出てきたが
まだ完全には会得に至っていない
自分の地元の田舎であれば
地域のおばさまに声をかけられることは
常なることではあるが
18で上京して以降
道を歩いていて急に知らない人から
声をかけられることなどほぼ皆無だったので
とっても新鮮な経験である
中には「早く家に帰ってあげなさいね。」とか
「足寒くないのかしら。毛布かけてあげてね」とか
「夜はちゃんと寝てるの。昼間あまり寝かせちゃダメよ」とか
僕があまりに頼りなさそうなのであろう
アドバイスを下さる先輩たちもいる
あとは
先日スーパーで話しかけてきて
おしゃべりが楽しいのか、ぶぶをもっと見たいのか
袋から飛び出たネギを前後にグラグラさせながら
家の近くまで横を並走してきたおばさまもいた
もちろん皆さん僕ではなくぶぶに関心があるのだが
ときどき
もしかすると自分のモテ期なのではないかと
勘違いしてしまうこともある
ある時電車の席に座って
こちらを向いていたおばさんとおばあちゃんに
愛想を振ってニコリとしながら頭を下げた
そしたら二人とも
見てはいけないものを見てしまったかのような顔で
すっと目を逸らすではないか
おっと久々にぶぶの効力が無かったかと思って
はっと我に帰ると
そういえばその日はぶぶを連れていない日であった
知らないアラフォー予備軍男児から
電車の中席の向こうからニヤリと微笑みかければ
誰でも目線を逸らしたくなるだろう
モテ期は決して自分の力ではなくぶぶの力なのだ
父親なんぞ「ベビーカーを押す動力」
くらいにしか見られていないのだろう
ところで昨日
妻の実家の台北でデパ地下に昼食を食べに行った
そしたらデパートの中の食事フロアのど真ん中で
台湾のおばさまが話しかけてきた
すごかった
台湾のおばさまは日本の比ではない
ぶぶの肉付きが良いという話から始まり
ぶぶの成長について
ミルクはどの種類を使っているのか等
話題は詳細に及び
最後の別れ際もなかなか
我々を手放してくれなかった
そして「温もりスマイル」どころか
「ニカーッ」とピカピカの笑顔を浮かべて
ずっとこっちを向いて手を降りながら遠くに去っていった
台湾のおばさまがすごいのか
赤ちゃんの持つ力がすごいのか
とにかくぶぶといると知らない人たちと交流できて
結構楽しかったりもする
自分も赤ん坊の時は
こんなに多くの人を引き寄せる
不思議な力があったのだろうか
いつの間にそれを無くしてしまったのであろう
こうやって赤ちゃんは
自分の親だけでなく
地域のご近所さんや町の知らないおばさままで
多くの人たちを魅了し
愛情をたっぷり受け
多くの人の手で育ててもらうのだ
そして36歳にもなり
自分の手だけで生きていけるようになると
そんな可愛らしい魅力はすっかり無くしてしまい
「ベビーカーの動力」となってしまうのである
人生初のモテ期が到来しているぶぶを
少し羨ましく思う父であった
おしまい。



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