Letter No.17 そよ風

 


時刻は朝の7時50分

ズッズッズッズと

二人の大人が草履で歩く音が聞こえる


しかしこの二人歩き方が似ている

歩く時に足を高く上げるのが面倒なので

微妙に靴の裏を引きずりながら歩くのだ


ズッズッズッズ

古い石垣や老朽化した家で

挟まれた暗くて狭い道に

二人のずり足とベビーカーの音が響く


ズッズッズッズ

あれ、こんな家初めて見た

拡張したこんだけ分道広くなったね

こっちの田んぼ草ボーボーやな


どうでも良いことばかり話している

まだ8時前とはいえ太陽がジリジリと照りつける

陽の光が顔に当たって熱いんですけど


父ちゃんとじいたん(父ちゃんの父ちゃん)

二人ともそういう気配りは

あんまりできないタイプの人間だ


それにしてもいい天気だ

朝の風にゆらゆらとそよぐ

イネの葉っぱが

お日様に照りつけられて

若葉色に光輝いている


その田んぼの周りを区切る

でこぼこなコンクリートの畦道が

若葉色を一層浮き立たせる


背景には猛々しい鈴鹿山脈が

地平線からニュニュニュと生えている

ほとんど雲のない一面の青空に

ゴツゴツした山肌が映えている

いつか父ちゃんと登ってみたいな


相変わらず陽の光は強いけれど

ふわり肌に感じる風が心地いい


「いい風」

バービー(父ちゃんの母ちゃん)がいれば

きっとそう言うだろう


山の上から

目前に広がる田んぼめがけて

ザザーっとそよ風が

舞い降りてきて

イネの上に波を起こしていく


耳をすませば

シャラシャラシャラと

イネ同士が爽やかな音を奏でていく


父ちゃんいわく

ここは父ちゃんがちいちゃかったとき

よくザリガニを取りにきた

遊び場だそうだ


お正月やお盆に帰ってくると

ときどきこっそりここに来て

懐かしみながら

景色を見ているらしい


季節が変わったら

また父ちゃんと一緒に

違う景色を見てみたいな


そんなこと思いながら

佇んでいたら


ズッズッズッズ

二人の親子がまた歩き出した

陽の光が僕の弱い肌を容赦なく照りつける


ズッズッズッズ


僕はこんなみっともない歩き方は

絶対しない大人になろう



おしまい。


















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