Letter No.13 恐怖のアンパンマン
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| 病院でもらったアンパンマン風船 |
大人はちょろい
ちょっとキャッキャっと
はしゃげば
すぐ嬉しそうな顔をする
父ちゃんは特に簡単だ
僕が鍛えたおかげで
最近は自分の泣き声一つで
僕が何して欲しいか
分かるようになってきた
ミルク、オムツ、ねんね
これはほぼ完璧に分かっている
ミルクに至っては
朝4時半に僕が少し声をあげれば
まだうす暗い部屋を横切って
半分眠ったゾンビのように
キッチンまで哺乳瓶を求めて
自動で歩き始めるにまでに成長した
だがちょっと難易度を上げて
抱っこ、歩け、遊べ
を混ぜるとてんでダメだ
遊んでほしいから騒いでるのに
ぽけーっと間抜けた顔をして
「おちっこかな、ぷーしたかな」
なんて嬉しそうに近寄ってくる
全然違うんですけど!
肝心なところでかゆいところに手が届かない
ぼくの育て方が悪かったか
ひよこくらぶとか育児の本を
もうすこし真面目に読んで
自分でもよく勉強してほしい
ちなみに
じいちゃん、ばあちゃんたちは
更にびっくりするほどイージーだ
少し口角を上げただけで
ギャーギャー興奮しながら
割れんばかりの拍手喝采だ
彼らには一生怒られることはなかろう
美味なものや欲しいおもちゃも
十中八九手に入れる自信がある
今後のことを考えて
もっとサービスしておこう
しかし 2日前に
世の中には僕がコントロールできない
世にも恐ろしい大人がいるということがわかった
アンパンマン爺さんだ
ああ、神様、僕に言葉があれば
世の中の赤ちゃん同志達に
あいつは危険だ、近寄るなと
伝えてあげられるのに
金曜の朝のことであった
父ちゃんと母ちゃんは
まだ眠い目を擦りながら
8時過ぎに僕をビョーインに連れて行った
あれるぎいに関する診察だとか言っていた
ビョーインというやつは
服を脱がされるし
冷たい台に乗せられるし
ひどいときはオムツを奪われて
恥ずかしい格好までさせられるので
あんまり好きではない
しかしこの病院はパラダイスだ
右を向けば大きな恐竜
左を向けばブーブーやぽっぽー
天井からは大きな虫さんがぶら下がっている
父ちゃんが言った
我々にとってのスーパー銭湯みたいなもんだな
・・・よくわからないし
母ちゃんにも全然響いていないようだ
さて、優しそうな女性の先生の診察が終わると
先生が聞いたことのない言葉を発した
まだちょっと早いけど、せっかく来たから
「けつえきけんさ」しとこうか
父ちゃんと母ちゃんの顔が
一瞬曇った気がしたのを僕は見逃さなかった
しかし父ちゃんは
そうだね、せっかく来たしね
と僕の顔をあえて見ずに
先生にOKサインを出した
父ちゃん、母ちゃんが
ベビーカーで僕を別の部屋に連れて行く
振動があまりに心地よく
ついつい居眠りをこいてしまった
5分ほど落ちていたであろうか
眠たい目をあけると
目の前にジャムおじさんがいた
いや、正確にはジャムおじさんのように
優しそうな爺さんが
上から僕を見下ろしてたのである
いつの間にか父ちゃんと母ちゃんはいなくなっていた
ピンク色のアンパンマン柄のエプロンを
首から下げてにこにこしている
周囲を囲ったカーテンも
アンパンマンだらけだ
アンパンマン爺さんは言った
ありゃ、おはよう可愛いね
パパとママはお外に出てもらったけど
大丈夫だからね
すぐ終わるし、痛くないよ
トロけるような優しい声でそう言うと
僕が好きなきょうりゅうのついた
緑色のかっこいいリストバンドを取り出した
なんて素敵な爺さんなんだろう
虫も殺さないような柔らかい目で
僕を見つめている
次の瞬間
ぼくの右腕の真ん中あたりに激痛が走った
爺さんの右手に握られた注射の針が
僕の右腕の関節部分を捉えている
爺さんの表情は何一つ変わっていない
この世のものとは思えない痛さだ
自分の声とは信じられない
魂の叫びがのどちんこをふるわす
大丈夫だよ〜痛くないよ〜と
あからさまな嘘をつく爺さん
全然大丈夫じゃない
痛い痛い痛い
涙の粒がほっぺを伝って
台の上にに落ちる
ようやく終わりかけと思った次の瞬間
目にも止まらぬ速さで注射器のカートリッジを交換する爺さん
大丈夫だよ〜もう直ぐだよ〜
この爺さん、大嘘きではないか
父ちゃん、母ちゃんが外に出された理由がようやくわかった
これでは誰も助けを呼ぶことができない
爺さんは極めて戦略的に物を考えている
相当なやり手だ
あとで父ちゃんが話していたことには
僕はものすごい鳴き声で
終わった後は涙で
顔がびしょびしょだったらしい
カーテンから入ってきた
父ちゃんや母ちゃんに
爺さんは言った
大丈夫でしたよ〜頑張りました
そんなこと言いながら
止血のために
きょうりゅうの緑のリストバンドを
僕の腕にせっせと巻いている
頑張ったのは事実だが
大丈夫では全然ない!
「大人を決して舐めてはいけない」
アンパンマン爺さんは
そんな大切な教訓を僕に教えてくれた
しかし
「けつえきけんさ」をやることにOKした
父ちゃんは絶対許せない
今晩は1時間おきに夜泣きの刑だ
あー
本当にとんだ目にあった。。。
おしまい。
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| 採血室でもらったステッカー |




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